シュンと9人のハードワーカー、そしてGK。

これから先の話はフィクションです。
実在の人物も登場しますが、
それは話の都合上、その表現にした方がわかりやすいからです。

シュンという左利きの選手がいる。
ボールコントロールが巧みで、
とくに左足から繰り出されるロングパスは正確無比、
また上空から俯瞰したような展開力には、
さまざまな人々が驚嘆の声を上げる。
しかり彼には弱点があった。
1つは、そんなに足が速くないこと。
したがって、スペースに走りながらパスを受け、
そのスピードに乗ってシュート、センターリングというのが、
それほど得意ではない。
だからいつも自分のタイミングでプレーしたい。
できればスピードに乗ったプレーでなく、
一度フェイント入れて、切り返して、また切り返してから、
得意の左足でボールを蹴るのが、彼のスタイルである。
2つめの弱点は、守備が拙いこと。
まず、ポジショニングが曖昧である。
おそらく彼に守備力を期待した指導者がいなかったのだろう。
高校生でも出来ることをしようとしないのである。
また足の速さも関係あるのかもしれないが、
ボールを持っている選手に対して近づく(アプローチ)が遅く、
その間合いやタイミングが不安定。
おそらく高いレベルの選手にとっては、
シュンの守備はなんのプレッシャーにもなっていない。
事実、そこからチームの守備が崩れていく様を何度も見た。

またもう1つ、心配なことがある。それはケガである。
シュンの以前に、ナナというやはり左足の希代のゲームメーカーがいた。
彼もほとんどプレーを左足でする。
風の噂で聞いた話。
ニュースソースはサックスブルーのユニフォームの元フィジコ。
ナナ選手の重心は、左足のプレーにこだわるあまり、
ずれているのだそうだ。それは反対の足のケガにつながるくらい。
選手生命の延命のために、
カラダのバランスを整えるのにたいへん苦労したそうだ。
しかしそれでも限界があるとのこと。
過度の利き足ばかりの使用は、選手生命を縮めることになりかねない。
事実、シュンもいま、股関節に痛みを抱えている。
ただでさえ得意でないフリーランニングや守備への貢献は、
もうこれ以上は無理かもしれない。

ただ、シュンにしてもかつてのナナにしても、
あれだけのキックができる選手はそういない。
そうなると、
彼の負担を軽減できるようなシステムや選手の選考が必要になってくる。
本来は10人のフィールドプレーヤーですべき守備を、
シュンをのぞく9人でするのだから、
その9人は肉体的に優れた人物である必要がある。

かつての日本代表の元監督ジーコは、
3-5-2システムを選択し、MFの5人のうち2人は、
守備のできるサイドプレーヤーを選んだ。
(駒野選手は?だが)
しかしながら中央のMFには、
中村俊輔選手の他、中田英寿氏と福西氏を選んだ。
福西氏はともかく、中田氏はハードワーカーではない。
やはりゲームメーカーである。
中村俊輔選手を活かすなら、
その背後にはスピードとスタミナにあふれる、
屈強なカラダの持ち主を選ぶべきだった。
そのさんさんたる結果は、衆知の通りである。

現代表監督の岡田氏は、
回復しつつあった前代表監督のオシム氏に、
中村俊輔選手と遠藤選手を同時に起用する方法を聞いたという。
それにオシム氏は、
「好きにしたら。」
と答えたという。まさにその通りである。
いまの監督は岡田氏。
岡田氏は自分の責任でチームを指揮せねばならない。
何も、誰にも聞く必要はないのである。

この件で明らかになったように、
中村俊輔選手と遠藤選手の同時起用は、
現監督も頭を悩ませているのである。
そしてそれは、ウズベキスタン戦とカタール戦、
そしてその前のキリンカップの2試合で判明した。

元FCバルセロナの監督、ライカールト氏は、
ロナウジーニョを左ウイングのポジションで起用した。
それは守備の上手くない、
あるいは守備のする気のないロナウジーニョを出場させる、
守備のリスクを徹底的に少なくさせるためである。
ロナウジーニョが守備しなくても、誰かが代わりに守備をすればよい。
でもロナウジーニョの代わりは、誰にもできない。
ロナウジーニョには世界最高のドリブルとフェイント、
そして正確なキックとイマジネーション、
そしてスピードと高さがある。それで得点すればよいのだ。
得点機に力を発揮すればよいのだ。
それは他の誰にもできない。
しかし、この特権はチームに破綻をもたらした。
ライカールト氏は解任された。
新監督は、順応性が低く、献身的でない選手を解雇した。
いまFCバルセロナで守備をしない選手はいない。

フィクションの話に戻る。
シュンはオシム氏のいうところのエキストラキッカーである。
そのキックのレベルは、世界水準でも高い方である。
彼を活かすなら、
トップ下かサイドのウイングのポジションしかない。
しかしサイドに置くには、その背後に、
屈強なメンタルとフィジカルを持つ選手を置かなければならない。
シュンをのぞく、9人のフィールドプレーヤーは、
誰よりも献身的に動き続ける選手でなけらばならない。
まちがっても、ゴール前に攻撃参加してしまう選手ではダメだ。
日本代表の長谷部や遠藤のような選手では、
その選手が上がったとき、一番重要なスペースを空けてしまうからだ。
それはダメだ。
バイタルエリアでの守備は、シュンにはできない。

シュンはJリーガーではない。
シュンはJリーグの球団社長には、その付加価値は理解されなかった。
またJリーグの放映権は、Jリーグが一括で管理し、
その配当を各チームに公平に分けている。
ところがスペインリーグは、放映権は各チームのものである。
シュンが加入することで、そのチームの放映権が日本のスポンサーに
高い金で売ることが出来る。
それは数億円以上の価値を生むかもしれない。

サッカー選手は、もはやただの選手ではない。
ビジネスの道具にされることもある。
ただそれはサッカーの1部分であっても、本質ではない。
些末なことである。

シュン、すなわち中村俊輔選手の今後はどうなるのか?
また、南アフリカW杯での日本の活躍は。
もっと動きのいい若者が、Jリーグに出てきた。
誰を出場させるかは、監督の決めること。
それでも難しい。
ベテランに頼るのか、世代交代か。
ベテランが走れないのなら、とるべき決断は1つしかない。

ベスト4を狙うなら、中村選手は先発でなくベンチに置くべきだ。
もしベンチに置くことが出来ないなら、トルシエと同じ決断が必要だろう。
以上

この記事へのコメント

コディーノ
2009年06月24日 12:57
初めまして。いつもブログを楽しく拝見させて戴いてます。質問なんですが、小野選手と中村俊輔選手のプレーの違いはどのような所なんでしょうか ?
2009年06月24日 23:19
コディーノさん、コメントありがとうございます。
小野選手と中村選手の違いですか。
そうですね、小野選手はインサイドキックによる短いパスの
すばやい交換でまずペースを掴んでから仕掛けるプレーが多いと思います。
それ比べ、俊輔選手は自分のペースでボールを保持してから、
一気に決定機となるスペースへ出すパスが多いと思います。
この俊輔選手の姿勢は、オシム監督が初めて代表に俊輔選手を呼んだときに、
それとなく批判されていました。
私もこういった展開はあまり好まないので、
多くの選手を短いパスで経由しながら決定機をつくる、
小野選手のようなMFを好みます。
しかしながら小野選手も長いパスを使わないわけではありません。
本当に惜しいのは、小野選手、ケガが多く、
ベストパフォーマンスが出せないことでしょう。
本当にトッププレーヤーはたいへんだ、と思います。
コディーノ
2009年06月25日 02:37
質問に解答していただいて有難うございます。私の地元が赤いチームの隣の市(だった)ので小野選手にはまだまだ活躍してもらいたいのですが。大きな怪我をすると対人プレーや体のバランスに支障が出てしまうんでしょうか?楽しくサッカーする彼の姿が見たいですね。
2009年06月25日 04:57
小野選手、浦和レッズからプロ選手のキャリアを始め、
22歳のとき、シドニー五輪予選で重傷を負いました。
しかしながら完治後、オランダで活躍しました。
その全盛期は残念ながら、
日本の会場で見ることは出来ませんでした。
日韓W杯のときは虫垂炎を薬でチラシながらの
奮闘だったと思います。
よく覚えているのはワールドユースとき。
「エンジェルパス」と言われた、
そのインサイドキックのパスで日本ユース代表を、
決勝まで導きました。これまた残念ながら、
累積警告でスペイン・シャビとの戦いは実現しませんでしたが。
小野選手のキレのあるプレーをまた見たい、
というのは私も同じです。
2009年06月25日 06:46
コディーノさんの質問に答えてませんでしたね。
大きなケガをすると、体のバランスを崩してしまうそうです。
とても信頼している接骨院の先生がおっしゃてました。
ちょっとした痛みの原因は、
生来持っていたカラダのバランスが崩れて出てくること。
また、生来のバランスを崩すのはやはりケガということ。
また猫背など生活習慣や性格に起因する、
カラダのアンバランス→痛み→不調、というのもあるようです。
日韓W杯のときの守備の要だった森岡選手の足首も、
あまり原因がハッキリしなかったようです。
W杯のプレッシャーだったのかもしれませんね。
人間のカラダは精密機械ですから。

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